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【イスラエル駐在】戦争開始から470日、停戦合意&人質解放の瞬間 in テルアビブ!

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テルアビブ日常生活

こんにちは、a-box-of-chocolateです。ついに!ついに!!!ハマスとの停戦合意にたどり着いたイスラエル。そして1月19日、人質としてハマスにとらわれた女性3人が無事にイスラエル側に引き渡されました。

この戦争は私が駐在する前から始まっており、こちらに住み始めた時点ですでに「戦争が現在進行形」です。そんな私がテルアビブ市内の「人質解放広場(Hostage Square)」で目撃・体験した一連の出来事を綴っていきます。

イスラエル全土が歓喜の渦に。Hostage Squareで迎えた、人質解放の歴史的瞬間。

はじめに。私はいたって中立的な立場の駐在員で、たまたまこのタイミングでイスラエルに居た外国人にすぎません。シオニスト(ユダヤ民族主義者で、パレスチナにユダヤ人の民族的拠点を設置しようとする思想や運動を支持する人)でもないし、シオニズム運動に対して肯定的でもなければ、否定的でもありません。かといって、ハマスやパレスチナ人を支持しているわけでもありません。

インターネット上でも、あらゆる思想・価値観を目にするイスラエル・パレスチナ問題。しかし、私は両国に特に思い入れもなければ、宗教にも無関係です。時代背景や現在の思想を知ることは大事だと思いながらも、「こうあるべき」という意見は持っていません。そんな私ですら、今回の「停戦合意と人質解放の交渉」は注目していたニュース。そして、ついに具現化する瞬間を当事者の国で迎えることになったのです。

2025年1月15日(水)「停戦合意」の速報!

テレビ画面の写真です。

これまでも、幾度となく「停戦合意」のチャンスはあったわけですが、やはり「ツルの一声」ならぬ「トランプ氏の一押し」は効果てきめんだった、と言わざるを得ないタイミングでの停戦合意のニュース。15日(水)夜、6週間の停戦合意がなされ、19日から施行されることが決まりました。そして33人の人質が毎週少しずつ戻ってくることに。

15日夜のHostage Square。たまたま近くのレストランにいたので寄ってみました

繰り返しますが「偶然イスラエルに居ただけ」の私でさえ、このニュースを聞いて明るい気持ちになりました。イスラエル国民、そして人質当事者の家族、支援者は、いったいどれほどの喜びだったことか…。

2025年1月18日(土)停戦直前、攻撃の応酬…!

さぁ、これでミサイルアラートともしばしお別れだ!と思って一瞬油断していた私…。イエメンからミサイル攻撃されたのが、土曜日の午後4時前。IDFが迎撃したようですが、まだ停戦していない状態=最後の最後まで、攻撃が加速。むしろ、緊張が一気に高まっていたように感じます。

時を同じくして、テルアビブ市内のカフェでは、パレスチナ人男性が刺殺テロを起しました。ご多分に漏れず、このテロリストもその場で「neutralized(無力化)」されました。(イスラエルの文脈では、銃を持っている市民や軍人がその場で射殺する、ということです。)

一方、IDFもガザ地区での空爆を敢行。13人のパレスチナ人が亡くなりました。これで、ガザ地区での犠牲者は4万6000人に上るとされています。この数の捉え方は様々で、イスラエル国内の新聞は、「ガザ市民のたった2%に過ぎない」と断じる意見もあります。メディアに振り回されすぎるのはよくないと思う一方で、そういう考え方をしている人もいる、ということを知るのは大切です。

2025年1月19日(日) 午後4時。いよいよ、人質解放の瞬間が迫る!

そして日曜日。午前8時半から停戦合意スタートのはずが、ハマス側が「技術的な問題が発生した」と主張して人質のリストをなかなか提出しなかったため、停戦合意は3時間遅れ。11時半頃から施行されました。(この遅れの間に、IDFはさらなるガザの空爆を実行。)

人質解放は午後四時からと発表されていたので、私は思い立って「人質広場(Hostage Square)」へ出向きました。この広場の詳細は私の過去記事を参照してください。

すでに多くの人が集まり、設置されたテレビモニターに注目していた

このHostage Sqaureでは、毎週土曜日にデモが続いていて、19日夜も大勢の人が集まっている様子がテレビ中継されていました。私は(治安の心配も含めて)一度も参加したことがありません。大前提として、信条も熱意もないのに参加する資格もない、と思っています。

しかし、この広場の横を通るたびに、囚われた人たちが今どうしているのだろう…とふと思いを馳せずにはいられませんでした。この日は興味本位半分ではありましたが、国民が待ちに待ったニュースがどのように伝えらるのか知りたくて足を運びました。

ヘブライ語で、Don’t leave me behindと書かれたポスター
We are the majority in favor of a hostage deal – Free in our country
この日に解放される予定の女性三人をあしらったポスター

4時を過ぎても、なかなか人質解放の手続きが進まずハラハラしながらモニターを眺めていました。画面に映されるのは、狂喜乱舞のハマスの戦闘員…。なぜか車の上に乗っていたり、何かを叫んでいたり、大勢の人がスマホを向けてハマスの戦闘員を撮影したり、というシーンが延々と流されていました。(ヘブライ語のニュースで、何言ってるのかほとんど分からず)

それもそのはず、この人質解放の”deal”として、イスラエル側はパレスチナ人捕虜や逮捕した囚人を、この日は90人余りを釈放しました。嬉々として迎え入れるハマス側の映像も写されていました。

ハマス側の熱気もすごい

いや…正直な感想ですが、こんな覆面&巨大なライフル銃を装備した戦闘員にある日突然連れ去れ、言葉もわからないところに連れていかれ、痛めつけられ、生きるか死ぬかも分からない状況になったら…??想像しただけでおぞましい気分になります。

この映像は遠い遠い外国ではなくて、テルアビブからわずか80km圏内で起きている現実。

そのことが何より信じがたかったです。現実なんだけど夢のような出来事に感じる、不思議な気分でした。

あたりはだんだん暗くなっていきますが、午後5時過ぎに動きが!

ハマス側の車両から、ピンク色の服に身を包んだ女性の姿が確認されました!!

ますます大勢の人が集まってくる!そしてついに、人質の女性の姿が!!

拍手喝采!!!!ブラボー!!!わーお!!ヒュー!!!人々の、様々な感情が爆発します。

私の周りにいた女性はみんな涙を流していました。

待ち望んだ吉報に、安堵した瞬間

イスラエル国内のメディアはもちろん、BBC, CNN, Sky Newsなどの英語圏の主要メディアは速報で現地から生放送していました。日本の報道陣は見かけませんでした。

臨場感あふれる動画も挿入しておきます。こんなに大量の戦闘員に囲まれて、全世界が注目する中で行われた人質の引き渡し。画面越しですが、緊張感が高まるシーンでした。

Emily chzeret(חוזרת) – Emily returnsと叫んでいた支援者も。周りの人も、呼応するように声を上げていました。全然関係ない私ですら、心からこの瞬間を祝福しました!

すでに亡くなった方、戻ってきた方、まだ囚われている方。これが現実。
ハヌカを祝う蠟燭。燭台は黄色=ヒマワリでいっぱいに彩られていた

多くのイスラエル国民が関心を寄せた「人質解放」。今回イスラエルに戻れた人は、いまだに94人が囚われているうち、たった3人。「停戦」と「人質解放」は同列に解釈したいところですが、現時点では全員解放の約束はありません。そして「イスラエル人の人質解放(33人)」とはイコール「パレスチナ人捕虜の解放(約1900人)」でもあります。(ここでは英語メディアで表現されている通り、hostages=人質、prisoners=捕虜、と表現します。)

当面の停戦期間は、わずか6週間。これから毎週末(土曜または日曜)に、3~4人ずつ釈放されていき、6週間で合計33人がイスラエルに戻れる予定です。(人質の生死・安否は不明な人も含まれています)

私はこれまで、人質に囚われている人々についての情報はあえて遠ざけてきました。すでに解放された人々の体験談、10.7に起こったことのドキュメンタリー、ハマス側が公開している写真や動画など、様々な情報がありますが、あえて自分の生活に取り入れていません。

理由は、当事者には大変申し訳ないと思いますが、自分の情操面において良くない影響を及ぼす情報ばかりですし、それを知ったところで無力な外国人である私がどうこうできる範疇をとっくに超えている現実だからです。現実逃避と言われればそれまでですが、情報と一定の距離を置くことで、心の安寧を保ってこの国で生活している、という側面もあります。

そんな私が「人質解放」について語るのはおこがましいことですが、この広場にいた大勢の人の連帯感、団結力、涙や拍手、そしてこれまでの報道のされ方や人々の心の在り方を見ていると、やっぱりイスラエルは強い国だなという印象を持ちます。

国防軍が物理的に強さを保持しているという点だけではなく、国民一人一人が確固たる意志をもって、テロリストという存在に対峙している。絶対テロには屈しない、逆境には負けない、連れ去られた国民を助ける、という、強い意志。

パレスチナ人に対する蛮行や西岸地区での軍のふるまいなど、外国人の私は「え???」と思うこともたくさんあります。すなわち、これがシオニズムの一角なのだろうなと感じるわけですが、イスラエル側の主張や、人々の根幹にある芯の強さは一貫しているので、そのブレない強さは、なにか気圧されるものがあります。

同日、停戦に反対する政党は連立政権から離脱。本当の意味での「終戦の日」が来ない理由は、政権内の問題…?

イタマール・ベン・グヴィル国家安全保障相率いる極右政党「オツマ・イェフディット」は土曜日、イスラエルがガザ地区のテロ組織ハマスとの人質停戦協定を受け入れたことに抗議し、党員らが日曜日の朝に辞表を提出し、政府を離脱するという脅しを実行すると発表した。

「テロ組織ハマスとの無謀な合意が承認されたことを受けて、オツマ・イェフディット党は明日の朝、政府と連立政権に辞表を提出し、ベン・グヴィル、ヴァッサーラウフ、エリヤフ各大臣、委員長のフォーゲル議員、ハルメレフ議員、クロイツァー議員は辞職する」と同党は声明で述べた。

ベザレル・スモトリッチ財務大臣率いる極右政党「宗教シオニズム」は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相がスモトリッチ派閥を政権内に留めることでスモトリッチ氏と合意に達したため、合意に反対しているものの、今のところ政府と連立政権に残ることになる。

【参照】https://www.timesofisrael.com/otzma-yehudit-to-quit-coalition-sunday-religious-zionism-condemns-deal-but-remains

現在のネタニヤフ政権(リクード党、32議席)と連立している「オツマ・イェフディット」(”ユダヤの力”、極右政党、6議席)は、「停戦=テロリスト集団の勝利、テロへの屈服合意」だとみなしているため、連立与党から離脱しました。ベン・グヴィル氏は「完膚なきまでにハマスを倒してこそ勝利」と常々発言しているので、今回の停戦合意=敗北だと感じているのでしょう…(こういう考えの人もいます)。

実際、ハマス側は「我々の勝利」だと主張し祝福しているので(西岸地区の入植地拡大などを含め、イスラエル軍がやりたかったことを遂行させなかったという意味で)、あながち的外れというわけではない…のかもしれません。

また「宗教シオニズム党」(こちらも極右政党で、オツマ・イェフディットとは選挙連合を組んでいる)のスモトリッチ氏も同様な思想の持主で、停戦合意=残念なこと、と表現しています。彼らが考える勝利=ガザ地区のハマスの完全壊滅=まだ達成していないので戦争を続けるべき、と主張しています(こういう考えの政党もあります)。彼は政権に残っています。

なお、現在の与党は4つの政党による連立政権で、国会120議席のうちの過半数=68議席を確保しています。そのうち、「宗教シオニズム&オツマ・イェフディット」が14議席を占めています。ベン・グヴィル氏らが去ってもまだかろうじて過半数はキープ。しかし、連立政権ならではの意志疎通の難しさが一気に噴出している模様です。

それにしても…この14議席の超極右政党の主張=「戦争を止めるな!」という声が、国の行く末に大きく関与してくるという事実は見逃せません。第二段階の交渉は、停戦合意から16日目から始まる予定で、残る人質の解放やイスラエル軍の完全撤退、恒久的な停戦も協議される…ことになっています。

とはいえ正直なところ、身内に停戦反対者がいる段階で、恒久的な停戦はかなり難航するのでは?と想像します。さらに言えばこれから6週間ずっと停戦が発動されたままかも不透明ですし、どちらかが均衡を破って、ドカーン!となる可能性もゼロではありません。

”Bring Them Home Now” ー 今度こそ、全員が愛する人の元に帰れますように。

総じて、政党(しかも与党)が主張していることと、国民が願っていることに大きな乖離がある点は否めません。果たして一般市民の多くは、「今すぐハマスが人質解放すれば戦争は終結する」と思っています。“Bring Them Home Now”という主張の通りです。一方で「ハマスを壊滅させてこそ戦争は終結する」と主張する一般市民もある程度います。実際、停戦合意の日にも「アンチ停戦」のデモが行われたいたところもあるようです。

しかし、あの瞬間に人質広場で感じた温かな空気。同胞、同郷の者に寄せる思いやり。あれこそが、イスラエル国民が持っている本質なのだと私は信じています。今度の土日にも、また同じような温かい拍手と歓喜の輪で人質の帰還を喜べますように。

※最後に、ガザ戦争関連のニュースで頻繁に目にする英単語を並べておきます。メディアは右寄り~リベラルなものまで本当に様々です。イスラエル関連の日本語ニュースは少ないほうだと思いますので、ぜひ英語で書かれた様々なメディア情報もお確かめください。

hostage (ホステージ)… 人質

hostage release(ホステージ・リリース)… 人質解放

cease-fire (スィース・ファイヤ) … 停戦

deal(ディール) … 交渉、取引

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