【12 Days War終戦】12日間戦争、イスラエルvs イラン。停戦合意…の効力はいかに?

こんにちは、a-box-of-chocolateです。あれよあれよと戦争開始からほぼ二週間が経過しましたが、結局、終始テルアビブにいました。
私個人は元気です。連日のアラートのせいで寝不足なのは確実。軽い頭痛がするし、肌荒れも著しいですが、食欲不振になることもなく、心労で体重が減るなんてこともなく。外をウロウロするのは控えていましたが、近所に散歩にいったり、買い物に行ったりする日常は変わっていません。
昨日まではイスラエル全土で仕事や教育活動が禁止となっていたので、通常と比べてとっても静かだったテルアビブ!昼間に自宅にいる時間が増えたので、ここぞとばかりにoutlierの音声録音タスクにもガンガン取り組んでいました。(静かな環境での収録が必要な仕事です。)
そんな毎日の中で、昨日突然飛び込んできた【停戦合意(ceasefire)】!このジェットコースターのような12日間の戦いが「一応終わった」ことになりました。果たして、これを以てめでたしめでたし…となるのでしょうか。
目次
イスラエル、イラン、アメリカ。中東全土を巻き込んだ、怒涛の戦いの行方。
ここ10日以上、あらゆるイスラエルメディア(テレビ)、Xのポスト、そしてFox NewsやCNNなど、我が家のテレビで視聴可能なアメリカメディアのニュースを見てきました。
これまで中東諸国に対して関心も払ってこなかった私ですが、独断と偏見100%でそれぞれの国を表現すると、 こうなります。

戦うことこそ正義。とにかく血気盛んなイスラエル

ミステリアスさを保ちつつ我が道を行く、負けん気が強いイラン

盛大な「ケンカ」の仲裁をする、お母さんみたいなアメリカと、みんなのお父さん・トランプ氏。
そんな三者によるやり取りを、全世界を巻き込んで展開しているのでは…と感じています。
6月22日(日)、アメリカがイランの核関連施設を攻撃!
トランプ氏の出方次第なのかな、と思っていたこの戦争の行方ですが、22日深夜、ついにイスラエル側の肩を持つ感じでイランへの空爆に参加したアメリカ。
イランの主要な核濃縮施設は完全かつ徹底的に破壊した、作戦は大成功に終わった、というトランプ氏の発表もありました。イラン側は被害を否定していますが。
アメリカの参戦について、イスラエル側は大喜び!朝にはこんなデジタル横断幕まで飛び出しました。
ありがたいかどうかはさておき、イスラエルとアメリカの関係性が伺えるシーンです。
6月23日(月)、イランが中東諸国を攻撃!
黙っちゃいないイランは、報復としてカタールにあるアメリカ駐留米軍基地を攻撃します。14発のミサイルが打ち込まれました。イランとカタールなんて、目と鼻の先。
ペルシャ湾を挟んで対岸なので、ミサイルがガンガン飛んでくる様子がいろいろなメディアで拡散されていました。怖すぎる…。
クウェート、バーレーン、UAEも一時的に領空を閉鎖する大混乱を引き起こしました。
しかし、イラン側はアメリカとカタールには攻撃を事前通告していたようなので、ある意味ではちょっとした「プロレス」のような殴り合いのショーが開かれたわけです。
トランプ氏も、事前通告のおかげで甚大な被害はなかった、と述べています。
6月24日(火)、夜明け前の、鶴の一声。トランプ氏が発した「停戦合意」ポスト。
朝5時すぎ、再びけたたましい「絶望メッセージ」によって起こされました。ヘブライ語オンリーだったのに、いつの間にか四か国語対応が始まっていました。
それと当時に、トランプ氏による停戦合意発表があったことも知りました。「あれ?停戦合意とは?」と思いながらもシェルターに駆け込むと、ミサイル発射ラッシュが!
「停戦合意前の駆け込み攻撃あるある」らしいです。
アラートが鳴り終わり、シェルターから出ていい、という通知が来たのとほぼ同時に、シェルターに行きなさい、という通知の繰り返しでした。(合計5~6回)
テルアビブでは迎撃音が数回、遠くの方で聞こえただけですが、ベール・シェバという南方の都市では民家に直撃、4人が死亡する大惨事となりました。
停戦合意の報道が出ていたこともあり、油断もあったのか。エリアによっては自宅にシェルターがないところも多いので、混沌を極めた結果、逃げ遅れた人がいたようです。
トランプ氏の描くスクリプトでは、停戦は(イスラエル現地時間)午前7時から発動するはずでしたが、その時間を超えてもなお続く攻撃ラッシュ。
停戦したのか?していないのか?という混乱とともに、とりあえずシェルターを往復する忙しい朝でした。
これに関してはあとから知ったことですが、このイランからの怒涛の攻撃の前に、イスラエル軍がテヘランを爆撃していたようですね…。イスラエル国内では、イラン側の情報(イラン国営放送とか、アルジャジーラ)は何も報道されないので、一方的にやられたのかと思っていました。
午前10時頃、イスラエル側も停戦合意に達したという報道が出たにも関わらず、午前10時30分には、今度はイスラエル北部にもミサイル発射ラッシュが巻き起こり、「え、、、トランプ氏の虚言?夢の停戦?」と思ったものです。
この時の双方の主張も非常に強硬でして…

うちはもう停戦合意を発表したのに、イランが先に攻撃してきた。だから攻撃し返すしかない。やはりコテンパンにやっつけるべきだ。

停戦合意後に攻撃なんてしていない。自分たちで撃ったミサイルが自陣に落ちたのでは(自作自演説)?
だんだんと兄弟げんかのような文脈になってきて、「やった、やってない」「そっちが先、あっちが先」の水掛け論がヒートアップ。
トランプ氏の停戦案も攻撃終了までに12時間の猶予(?)を設けるなど、いまいち煮え切らない感じでした。
そしてついに、お父さん(トランプ氏)マジ切れ。
「どちらの国もwhat the fXXk!」と罵られる事態に…。一国の大統領に、Fワード使って怒られる羽目に。

「どっちもいい加減にしなさい!ハッピーじゃない!どっちもルール違反!」
「イスラエルはその爆弾を落としちゃダメ!早く軍を連れ帰りなさい!
幼児期の子育て中って、しょうもないことで子どもがぐずったり、きょうだい喧嘩をはじめたりすると、イライラしますよね。あまりにしつこいと、ひっぱたいてやりたい衝動にすら駆られます。
私はこの一連の騒動を眺めていて、ついつい、そんな気持ちがふつふつと湧いてきました。
そして結局は喧嘩両成敗に無理やり持ち込まれて、どっちも納得していなくてブツブツ文句連発しているけれど、とりあえず親が怖いから一瞬黙っておこうかな…という。
そんな流れなので、停戦合意に関する条件も「イスラエルが攻撃してこないって約束するなら合意する」「そっちが約束守るなら、こっちも守ってやる」みたいな…あまりにも頑固な子どものわがままみたいなことばかり主張していました。
もちろんどちらも、自分が悪いとは一ミリも思っていません。
国民性の違い?で片づけていいのかわかりませんが、協調性ばかり叩き込まれた日本人の性としては、「悪い事したら謝ろうね」という道徳教育の理論が通用しない国に住んでいるのだな…と思ってしまいました。そもそも、そんな倫理観があれば戦争なんて起きていないはずですが。
そこを、強引に停戦にまでこじつけたトランプ氏は、やはり求心力があり、やり手なのか。それとも世界中を混乱に陥れ、ひっかき回しているだけなのか。
少なくとも、イスラエル側はトランプ氏に「感謝」しているスタンスは崩していないようです。
以下の写真は、24日よる8時、緊急事態宣言か解除されたあとにテルアビブを散歩していたときに見かけました。トランプ氏の功績を称えるイスラエル。
一生分かり合えない相手との「停戦合意」はいつまで続くのか?
目には目を歯には歯を、報復には報復を。
やられる前にやれ!
この価値観で育ってきた人たちにとって、「やられたのに一方的に引っ込んでるなんて、負けを認めるようで許されない」という憎悪?にも似た感情が先行してしまうのでしょう。
自分たちの土地を守るためならなんだってやる、脅威は全部撃ち落とす、という強い覚悟で戦闘を仕掛けるイスラエルにとって、イランの核関連施設を壊すことは、「将来的な脅威を叩きのめす正義」であり、ひいては全世界のために自分たちが「汚れ仕事」を引き受けている、という優越感?すらあるようです。
イスラエル国内で報道されていた「イランの現状」も独特で、ハメネイ師を最高指導者に据え、35年以上続くイスラム共和国は崩壊するべきで、今こそ人々は圧政から解放されるべき!イラン国民は、我々が革命防衛隊を破壊することで苦しい生活から解放されることにつながる、ひいてはイスラエルに感謝している!というテレビインタビューやユーチューブ動画なども目にします。(本当のところ、イラン人はどう思っているのでしょう…。)
https://www.iranintl.com/en/202506135945
そして、Rising Lionという今回の作戦名にも、きちんと聖書に由来した意味があったようです。
“עָם כְּלָבִיא יָקוּם“
Bible – Behold , he shall rise up like a lion, and shall exalt himself as a lion; he shall not lie down until he eat the prey , and drink the blood of the slain :
https://www.mgketer.org/tanach/4/23/24
Numbers: “Behold, a people shall rise up like a lion, and shall lie down like a lion; it shall not lie down until it devours prey, and it shall drink the blood of the innocent” (Numbers 23:24). It is taken from the well-known prophecy of Balaam ben Beor
【日本語訳】民数記:「見よ、一つの民が獅子のように立ち上がり、獅子のように伏す。獲物を食い尽くすまでは伏せず、罪のない者の血を飲む。」(民数記 23:24)。これはバラム・ベン・ベオルの有名な預言から引用されています。
https://www.ynet.co.il/judaism/article/skxysvtxgx#google_vignette

獲物を食い尽くすまでは伏せず⋯!!!
(イランを倒すまでは降伏しない、というメッセージ??)
ネタニヤフ氏は、「戦争の目的を達成した」と表明しています。
“I reported to our security cabinet that Israel achieved all of our war goals in the operation, including removing the threat of Iran’s nuclear and ballistic missile programmes. Israel also damaged Iran’s military leadership and several government sites and achieved control over Tehran’s skies,” news agency AP quoted him as saying.
参照元はこちら
大仕事をやってのけた!というニュアンスが伺えなくもないですが。これがイスラエルの価値観であり、戦争は正義に基づいた行動なのだということです。
それが世界に許容されるかされないか、というところは二の次なのが、この国のすごいところだと思います。
人の反応や顔色を伺いがちな私からすると、他者からどう思われようが関係ない!という自己主張の強さを目の当たりにすると、たじろいでしまうほど。
イスラエルに来て以来、「レジリエンス」という言葉を何百回も耳にします。
逆境に立ち向かう力、弾力性、強さ。
今回もまた、そんなイスラエルの「強さ」をまざまざと見せつけられる格好となりました。防衛システムも、攻撃体制も、とにかく相手を圧倒する。まさにライオンです。
駐妻の呟き
以前から思っていますが、勝利の喜びに浸るなら、方向転換をオススメしたい心境です。
サッカーでワールドカップ優勝とか(人気の国内リーグもあります)、ビーチバレーでオリンピック金メダル取るとか(ガチで上手い市民ばかり)、ボクシングで世界チャンピオン取るとか(鍛えてる人いっぱいいます)。
美しいビーチも海も山も揃っているので、観光名所も山ほどあります。
新鮮な野菜や果物が豊富で、地中海料理と中東料理の融合した美味しいレストランもたくさんあります。ロンドンやニューヨークにも負けない、オシャレなカフェや美味しいコーヒーショップもたくさんあります。
「戦い」のフィールドって、武器やミサイルで相手国を攻撃したり、軍人を暗殺したりするだけではないと思うんですけどね⋯。(というか、そっちのほうが無理難題)
そんなことをぼんやりと考えた13日目です。つかの間の安息で終わらないことを願っています。