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【イスラエル】October 7th, 2024。戦争開始から一年。テルアビブで迎えるメモリアル・デー。

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【イスラエル】October 7th, 2024。戦争開始から一年。テルアビブで迎えるメモリアル・デー。 テルアビブ日常生活
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こんにちは。連休明けのテルアビブより、a-box-of-chocolateです。先週の火曜日、突然のイランからのミサイル攻撃によってイスラエル全土が再び恐怖に飲み込まれました。公式発表では「実害無し」となっていますが、ミサイルが墜落したところでは、大なり小なりダメージがありました。そして迎えた10月7日は、ユダヤ人にとっての日常が一変した日。今朝はガザ地区から再びロケット弾がテルアビブに向かって放たれ(軍が迎撃)、イスラエル側はさらなる侵攻を宣言。一年経って、状況は良くなるどころか悪くなっているのでは?と感じます。ただただ、悲しみと絶望が募る戦争の果てにあるものはなんだろうか?と思う毎日ですが、こうして偶然にもテルアビブにいる私が感じたこと、見たことを綴っていきます。

Iron Swords War – 『鉄の剣戦争』と呼ばれるハマスとの戦いから一年が経過。イスラエル人の胸に刻まれた”October 7th”

当時の新聞記事

最初に断っておきますが、私はただの駐在妻で、ユダヤ人でもありません。どんな状況・理由であれ、「戦争」という暴力の形での応酬には断固反対です。イスラエル・パレスチナ問題は歴史的な意味でもかなり根が深く、大変複雑なものですし、どちらが正義でどちらが悪だなんて、私が判断できるような代物でもありません。しかし、「イスラエル」という国家を理解するためには、この状況を正しく理解する必要があると思っているので、こちらに来てから見聞きしたことを記していきます。

“Bring Them Home Now”- 人質解放を願う国民運動の中心地・Hostage Square(人質広場)in テルアビブ

2023年10月7日、ハマスの奇襲攻撃により1200人近いイスラエル人が殺害され、253人が人質としてガザ地区に連れ去られました。現在も101人が囚われの身のままです。テルアビブ美術館(Tel Aviv Museum of Art)前の広場は、戦争開始以降、「Hostage Square (人質広場)」として、主に人質としてハマスに捉えられた人々の家族が運営しています。

”#BringThemHomeNow”ムーブメントはイスラエル全土に広がっていて、あちこちに黄色い旗やリボン、バナーが飾られています。特にこの広場は、人質として捉えられた人々の顔写真、家族からのメッセージ、空席のダイニングテーブル、ハマストンネルのオブジェなどがあり、大切な家族・友人のことを忘れない、この人たちを早く助けなければいけない、という強いメッセージ性を感じる場所なのです。10月6日に訪れたときの写真を掲載します。

全部ヘブライ語なので読めないのですが、2023.10.7の出来事が時系列に説明されているものと思われます
アハシャブ=now、の意味。一年間、声を上げ続けた家族の気持ちを思うと…
だんだん、見るもの辛くなってくるディスプレイ
人質の家族らによって、Tシャツやバッジ、旗などの販売も行われている
The Hostages and Missing Square
ペサハ、ロシュ・ハシャナー、etc 家族で囲むはずだった食卓に思いを馳せるだけで、胸がいっぱいになる

これらの展示物を見ていると、ある日突然テロリストに大切な人をさらわれた人々の悲しみや、どうにかして救出したいという思いがあふれているのが伝わってきて、胸が苦しくなります。「大切な人を取り戻したい」、その気持ちに共感する多くの国民がこの広場を訪れ、ほぼ毎週土曜日になると大規模なデモ集会を開催しています。

Bring Them Home Now - Hostages and Missing Families Forum
Join our forum to support the return of all hostages and missing persons from October 7th events. Get updates, advocate,...

“Enough! Deal or Spread?” - ハマスへの軍事的圧力を強めるべきなのか、停戦交渉に応じるべきなのか?割れるイスラエル世論

“Enough! Deal or Spread?”

戦争が長期化し、ガザ(ハマス)との抗争だったはずが気づけばヒズボラ(レバノン)、ひいてはイランなどのイスラム系諸国との戦闘にまで発展している中で、当初の目的であった『人質の早期解放』はどうなったのか?という疑問が残ります。アメリカやカタールの仲裁で、これまでに三度「停戦交渉」の機会がありましたが、ネタニヤフ首相は全て却下しているからです。どう考えても、諸外国やテロリストとの戦争継続を優先しているような…。一般市民によるデモ集会でも、ネタニヤフ首相の辞任を求めるプラカードを持っている人がいたりと、だんだんと政権批判の声も強くなってきていました。

国民:停戦合意も視野に入れて、一刻も早く人質解放を!

ハマス:イスラエル軍の侵略停止やガザ地区からの完全撤退が実現しないかぎり、停戦の合意はない!

イスラエル軍:人質となっている人々やその遺族、そして北部イスラエルの7万人近い避難民のためにも、戦い続けることを約束する。あくまでもハマスの壊滅を目指す!

大雑把に言うと、上記のように全員が違う方向を見ているような状況です…。政治と世論の不一致って、どこの国でも起こりうることだと思いますが…ここまで強硬策に出ている政権が存続していることも、私にとっては大きな疑問なのです。

将来を楽観視する一方で、海外移住を考えるユダヤ人も2割近い。世論調査から見えるイスラエル国民の考え

今朝のTimes of Israelに、ヘブライ大学が行った世論調査(A Year to 7.10)の結果が出ていました。ガザおよび北部との戦争が、どのようにイスラエル社会に影響を与えたのかという点に関するアンケート調査です。調査対象者の数が約2500人なので、世論全体の声(イスラエルの人口は1000万人)として捉えるには不十分かもしれません。しかし私にとってはイスラエル国民がどのように現状を捉えているのかを知る、大変興味深いものでしたのでご紹介します。

Just a moment...
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以下、上記の記事および調査結果からの引用(翻訳)です。

国の将来についてどう思うかとの質問に対して、イスラエル人全体の37%が楽観的だと答えたのに対し、悲観的だと答えたのは34%、半々だと答えたのは29%だった。ユダヤ系イスラエル人だけを見ると、42%が楽観的、29%が悲観的だった。アラブ系イスラエル人では、楽観的だと答えたのはわずか14%で、大多数の57%が悲観的だった。

調査対象となったイスラエル人全体の実に62%が、イスラエル国家の将来に対するより大きな脅威は内部の分裂と脅威だと考えていると答え、38%が国外からの脅威が国にとって最大の危険だと答えた。この結果は、ユダヤ系とアラブ系の回答者の間でも同様だった。

国を離れて海外に移住する可能性について尋ねたところ、回答者の20%以上が関心を示し、そのうち9%が移住すると答え、11.3%が移住したいが移住できないと答えたのに対し、13%はわからないと答え、66.6%は移住しないと答えた。アラブ系イスラエル人回答者のうち、移住しないと明確に答えたのはわずか50%で、19%はわからないと答え、17%は移住したいが移住できないと答え、14%は移住すると答えた。

2023年10月の戦争開始時に、ハマスの攻撃とガザでの戦争がイスラエル社会にどのような影響を与えるか尋ねたところ、77%がより大きな団結をもたらすと答えた。しかし、1年後、それが国家に結束をもたらしたと答えたのはわずか40.2%で、40.6%はむしろ国民の分裂を招いたと答えた。

世論調査によると、2023年8月時点では回答者の59%が右翼派、25%が中道派、16%が左翼派と自認していた。2024年10月までに、調査対象者の66%が右翼派と自認し、左翼派と自認したのはわずか13%だった。

戦争の進展について意見を求めたところ、圧倒的な80%が北部戦線でのIDFの作戦は期待通りか期待以上だったと答えた一方、ガザでの戦闘についても50%弱が同じ意見だった。戦争の主な目標を尋ねたところ、回答者の52.6%が人質の返還と答え、ハマスの打倒と答えたのはわずか15.8%、ハマスのテロインフラの破壊と答えたのは10%だった。

世論調査対象者のうち、75%が人質を解放して戦争を終わらせるための合意に達するべきだと答え、25%が反対した。ユダヤ人の回答者の間では72%が支持し、アラブ人の間では88%が支持した。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は辞任すべきかとの質問に対して、全回答者の66.5%が「はい」と答え、全体の33%が即時辞任すべきと答え、残りは激しい戦闘の終結後または戦争終結後に辞任すべきだと答えた。回答者のうち、ネタニヤフ首相は辞任する必要がないと答えたのはわずか25%だった。イスラエル人のほぼ50%が、内閣は主に政治的考慮に基づいて決定を下し、専門的考慮に基づいて決定を下すことはないと考えていると答えた。

一方、回答者の70%は、1年前のハマスの猛攻撃に関する国家調査委員会を2024年10月7日に設立すべきだと考えている。

ユダヤ系イスラエル人、アラブ系イスラエル人、それぞれの意見の相違もあれど、多くの国民が戦争によって失ったもの(命、経済的損失、国民の結束力)を嘆いている、という現状です。そしてやはり、戦争を政治利用しているネタニヤフ政権の撤退を願う声も大きくなっています。

もともと、諸外国からイスラエルに「帰還」してきた多くのユダヤ人によって構成されているイスラエル国ですが、そのユダヤ人たちが、イスラエルを捨てて海外移住を考えるという事実が、事態の深刻さを物語っていると思います。

世界で唯一、イスラエルを積極的に支持するアメリカと、アメリカを戦争に巻き込もうとするイスラエル。国際社会から孤立してまで戦争を続けるのはなぜなのか?

今日は、IWC(国際交流会)主催のメモリアルイベントに参加し、在アメリカ大使館での大使経験もあるイスラエル人元外交官(アーロン・ピンカス氏)の特別講演を聞いてきました。一連の戦争は、外交的政策の視点から考えるとgeopolitical issue (地政学的問題)が大きく絡んできている、とのことでした。「ハマスはテロリスト、悪者だからやっつけろ!」「ガザにいる無実な一般市民、罪なき子どもまで殺すなんて悪魔の所業だ!」「ミサイル攻撃をしたら一般市民まで巻き込むなんて、考えればわかるだろ!」などなど、、、世間一般で聞かれる感情的な議論とはまた別軸で、イスラエルの政治的思惑(主にネタニヤフ政権の存続)、そしてアメリカの政治的思惑(主に大統領選を意識したユダヤ人ロビー活動へのアピール、およびイランや中国へのけん制)がそれぞれあって、お互いがお互いを利用するためにさまざまな駆け引きがあり、もはや後には引けないところにまで来ている、という見解でした。

しばらく中東問題からは手を引いて、ロシア対ウクライナの戦争に注力、ウクライナを全力支援していたアメリカが、突然イスラエル支援に全振り。そこには、中国(イランにとって、石油の輸出&貿易相手第一位の国)へのけん制ありきで、この戦争によってイランからの原油価格の高騰→中国が高すぎて輸入できなくなる→経済的に弱体化させる狙いがある、と言っていました…。ヒズボラvsイスラエルがここまで激化するのは予想外の出来事で、イランはある意味では戦場に引っ張り出されてしまった形でもあるようです。(そもそも、フーシ派とスンニ派は仲間でないので。)対するイスラエルは、アメリカを全面的に戦争に引き込むことで戦争を正当化する→戦争をやめたら失職&糾弾されるネタニヤフ政権を延命できる→軍事力的にも強化できる→ハマスやヒズボラ滅亡に近づける、という野望があるとも…。(※注意:英語で話していたことを日本語にしているので、だいぶ雑な説明です。)

そもそも、ネタニヤフ政権の初動(一年前の10月、ハマス側の不穏な動きをアメリカが察知してイスラエルに通知していたのに、無視していた件)からして、戦争を始めることに抵抗がなかったのでは?という見解もあるそうです。人質奪還がミッションではあるものの、停戦に応じないことでこのまま人質が(想像したくないですが)全員死亡してしまう、という結末を迎えたならば、そのままハマス撲滅に全振りしてガザを壊滅させるほど総攻撃をしかけるかもしれない、とも。

政治的、地政学的思惑は、国民の世論や感情論とは遠くかけ離れたものであり、この話を聞いて私は本当に恐ろしくなり、鳥肌が立ちました…。アメリカの最大の狙いである大統領選もまだ終わっていないし、戦争はこのまま続く様相を呈しているわけです。国民が願っていることなんて無視されているに等しい現状に、ただただ、嘆きが止まりませんでした。

アーロン・ピンカス氏はイスラエルメディア「ハアレツ」に連載記事を執筆していますので、ご興味ある方はご一読ください。

もう一度繰り返しますが、誰が悪者であるのか、そして何が正義であるのか、という点は、私が論じることはできません。国家や人種、政治、宗教、その他信条によって、正しさの物差しは異なります。しかし、自分の目で見たこと、耳で聞いたことを吟味して、消化して、知る。私にできることは、これだけなのかもしれませんが、戦争や平和について考えるには十分なきっかけであった10月7日です。

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