こんにちは。a-box-of-chocolateです。11月中旬のイスラエル、雨がぱらつく日が増えてきて、ついに長袖の服で外を歩いてもほどよい気候になりました。先日、「セブンイレブンがイスラエルから撤退」というニュースを見ました。私が4月に入国したときは、カルメルマーケットやディゼンゴフセンター、サロナマーケットなど、いわば「テルアビブのシンボル的ショッピングエリア」には、「セブンイレブン」がありました。日系のコンビニあるんだな~と思っていたのですが、気づいたら全て「セブンエクスプレス」になっていました…。状況は何も変わっていないようで、少しずつ何かが変わっている。変化を嘆くのか、成長の証だと思えるのか。それは全て「マインドセット(心の持ち方)」次第です―。
二種類のマインドセット(mindset)。『成長型マインドセット(growth mindset)』、『固定型マインドセット(fixed mindset)』とは?
きっかけは、アメリカンスクールの保護者向けワークショップに参加したときのことです。「(我が子が)何か難しそうなこと、失敗しそうなこと、自分には勝ち目がなさそうと思える状況になると、そもそも挑戦することさえ諦めてしまうことがあって…」と、カウンセラーに相談を持ち掛けてみたときに紹介してもらったのが、【MINDSET】という本でした。
『マインドセット』とは、人間の思考パターン、心構え、物事の捉え方を指します。スタンフォード大学心理学部のキャロル・ドゥエック教授が提唱するマインドセットには大きく分けて二つあり、一つは『グロース・マインドセット(growth mindset)』、もう一つは『フィックスド・マインドセット(fixed mindset)』と呼ばれるものです。それぞれがどんな特徴をもつものか、詳しく解説していきます。
キャロル氏のTed TALKがYouTubeにもありますので、ご興味がある方はぜひご覧ください!
Growth Mindset / 成長型マインドセットとは?
簡潔にまとめると、「自分の才能や能力は、学び、経験、努力によって向上・成長することができる」という考え方のことです。この考え方を持つ人は、壁にぶつかったときに肯定的な思考が生まれ、失敗を学びの機会として捉えることができます。常に挑戦することを楽しみ、成長し続けることができます。成長型マインドセットを持っている人は、以下のような「ポジティブ」な思考ができます。
『失敗は成功のもと』―「終わり」ではなく、「学びのスタート」だと捉える。「次に生かせること」を見つける糧にできる。
『才能より努力』―成功することを、才能の有無や運任せにしない。すべては継続的な努力、学習の結果であると捉える。
『ポジティブ思考』―ネガティブな自己批判を減らし、自分自身を励ます前向きな言葉を使う。
『挑戦を恐れない』―新しいことに挑戦する=新たな経験を得るチャンスだと捉える。
『他者からの批判・評価を受け止める』―他人からのフィードバックは自身を否定するものではなく、改善点を示してくれるものであると捉え、自分の成長へとつなげる。
『Not Yet (まだできていないだけ)の精神』―自分には成長の余地がある、今は学びの途中であり、失敗してもうまくいかなくても、「今はまだできていないだけ」と考え、学び続ける。
Fixed Mindset / 固定型マインドセットとは?
成長型マインドセットとは対を成す思考として、「固定型マインドセット」という概念があります。人は生まれながらにして、変えることのできない特定の能力を持っていると信じ込み、人間の性格、頭の良さ、想像力などは変えることのできない不変なものだとみなす考え方のことです。具体的には、以下のような特徴があります。
『失敗=自分の限界』―うまくいかないこと、失敗することは自分の限界を知ることだと考える。よって失敗することへの恐怖が大きく、そもそも新しいことへの挑戦を避ける傾向がある。
『努力しても無駄』―成功=才能が全てと信じ込む傾向があるため、自分はいくら努力しても結果は変わらない、と考えがち。よって、頑張ってもうまくいかないことが続くと、やる気を失いがち。
『他人と比べがち』―失敗か成功か、という結果が全てであるため、自分と他人を比較して、自分が劣っていると感じることが多い。他者の才能や成功に嫉妬し、「自分はダメな人間」と感じてしまう。
『現状維持が大事』―成長や変化は難しいもの、と考えるため、新しいスキルや知識を学ぶことに抵抗感がある。できないことをやって失敗するくらいなら、できることだけをやっていたいと考える。
成長型マインドセットを持つ人と比べ、自己肯定感・自己評価が低くなりがちです。他者からの批評に弱く、自信を失いやすいため、さらなる挑戦を避ける傾向にあります。
成長型マインドセットを高めていくことが、ポジティブに生きるヒント!
さて、ここまでお読みいただいたみなさん、自分の思考の癖はいかがですか?私の思考は「固定型マインドセット」寄りだなと思います。この本を読み進めていけばいくほど、子どものころから私が感じていたことだなという事例がたくさん出てきました。
今でも鮮明に思い出せますが、この思考パターンがピークだったのは高校生の頃。「自分は何にも向いていないのではないか?」「こんなことやっても将来何の意味があるのだろうか?」と、全てを否定的にしか捉えられない時期もありました。
当時はピアノに熱中していて、音大進学も頭をよぎるほど練習に打ち込んでいたのに、「音楽やったって食べていけないし、意味ない。ピアニストになれる人なんて才能がある人だけ。」と思い込んでいて、断念。結果的に英語をもっと学んでみたいと決めましたが、そのときですら「この世には英語のネイティブスピーカーが何億人もいるのに、私がやって何になるの?(クラスの帰国子女の友人より)全然英語できない私が英語を学ぶって、意味ある?」と…。ネガティブすぎて自分を自分で殴ってやりたいですが笑、この本にあるとおり「他人と自分を才能の有無で比べて、落ち込む」という負のループに陥りがちだった、10代の私。模試の点数、合否判定、内申点、その「結果がすべて」だった、狭い世界でした。
時は流れて、『駐妻』になった今思うのは、あらゆることにオープンでいられることの大切さ。成長型マインドセットをもってして駐在生活を考えてみたら、これ以上ないほどに充実した楽しい生活なんだ!と気づきました。
せっかく海外に住めるチャンスをもらえたのだから、外国語(ヘブライ語)に挑戦することで見えてくる世界がたくさんある!このままコツコツ頑張れば、もっとイスラエル人と仲良くなれるかも!英語でもヘブライ語でも、自分が一生懸命伝えようとすれば、周りの人もわかってくれる。知らないことを知る、行ったことがないところに行く、それだけで自分の経験や知識を深めていける、素晴らしい体験ができるにちがいない!!
どうせヘブライ語なんて習っても、イスラエルから出たら使わないし、難しくて全然上達しないんだから、もうやる意味ない。ペラペラ話せるようになる人は多言語環境で育った恵まれた人だけ。私には無理。そもそも、イスラエルなんてどこに行ってもテロやミサイルだらけで危ないし、そんなリスクを取ってまで外に出たくない。どうせ周りの人だって、私の英語もヘブライ語も下手って思ってるだろうし、そんな恥ずかしい思いするのも嫌だ。
「どうせ~なんだから…」と他者の反応を推し量り、勝手に自己評価を下げて自分の内面に逃げ込んでも、イスラエルで生活する、という根本は覆えりません。だったら、他人がどうのこうのではなく、自分がどう思うか、どう感じるか、それを主眼に捉えて生活した方が人生お得じゃない?と思います!
しかしながら、自分が周りにどう思われているのか、自分が周りの期待に応えられているのか、「他者評価」を過剰に気にして生きていた過去の自分がいてこその今の自分、だと思っているので、固定型マインドセットが絶対悪だとも思いません。とはいえ…視野狭窄で思い詰めていた自分の高校時代を含めて、今の日本の教育の在り方で子どもに与える価値観は「固定された(fixed)もの」になりがちではないか?と感じます。
”Growth Mindset”を評価項目に含めているアメリカンスクール
ところで、冒頭で述べた通り、この本を紹介してくれたのはスクールカウンセラーなのですが、実はアメリカンスクールの評価観点「Habits of Learning(学習習慣)」、日本の学校で言うところの「関心・意欲・態度」の項目には、「Growth Mindset」が含まれています。他の評価項目は「Self-Management」「Learning Engagement」「Citizenship」があります。
ちなみにシラバス内では、Growth Mindsetは以下のように説明されています。
Growth Mindset: Perseverance(忍耐), retakes(再受験), revision(修正), reflection(反省), delayed gratification(満足遅延). |
『満足遅延、満足の先送り』とは心理学の用語で、「目先の報酬への衝動的欲求を抑え(我慢、忍耐)、将来の目標を見据え、より大きな報酬を得ることを優先する」ことです。
キャロル氏の著書にもあるエピソードですが、テストの結果が「F」だったとき、それは「そのテストの結果がF(failure)」だっただけにも関わらず、自分という人間への烙印・ダメ出しだと捉えてしまう生徒(=fixed mindset)が一定数いる、という事例があります。「自分は失敗作」「ダメな人間」「できない」とそこで学びを止めてしまう ― のではなく、「まだできていないだけ(Not Yet)」と自ら考えて学びを止めない姿勢こそ評価するべきもの=生徒の「Growth Mindset」を育てる。【結果より過程】を重視する。口で言うのは簡単ですが、先生も生徒も、そして親も、このマインドセットを持つことは、人生をより豊かにするヒントになるのかもしれない、と思える良書との出合いでした。まだ全部読み終わっていませんが…最後まで頑張って読破します!
【参照サイト】
PR キャロル氏が「成長型マインドセット/Growth Mindset」という概念を研究・提唱するに至ったきっかけとして「難しい問題に目を輝かせて挑戦する子どもと、難しい問題を避けたがる子ども」が存在することに気づいた、と述べています。前者の子どもは、「やったことがないものに挑戦することこそ楽しい」という思考が根底にあるため、何に対しても興味をもち、積極的に働きかけていける。そうすることで「自分は新たなことから学んでいる、成長している」ことを自覚することができる。「知ることって、楽しいな!」と感じられる体験の積み上げこそ、幼児期~児童にとって、何よりも欠かせないこと。遊びながら思考力・想像力を育てるSTEM教育を通じて、「Growth Mindset」を育む土台を作っていきませんか?
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